この5月で、オアフ島のワイマナロで森林農業プロジェクトを開始してからちょうど5周年になります。今でこそ色とりどりの花々と樹木の青葉や勢いの良い野菜の緑が美しいコントラストを見せていますが、2020年自然農法による森林農業を始めた直後は長年の放置を物語るように、縦横無尽に伸びる蔓や長草が生い茂り、足を踏み入れることも困難な雑木林でした。前所有者の車、道具、ゴミもあちこちに捨てられていました。
しかも、それらの下から覗いていたのは粘土質の赤土。すぐに露地栽培ができるわけではありません。まずは敷地内をきれいに掃除したうえで、その上に、樹木の切りくずを手押し車で運んで畑の基盤を作る。刈り取った野草を鶏小屋内に運び、鶏たちがそれをついばみかき回し、小屋の下に落ちた草と鶏糞と微生物から腐葉土が生産される。それをまた畑に運んで畝に積みあげ屑野菜とミミズの堆肥を加える。こうして植物と鶏と畑の間を循環させながら通気と水はけが良い有機土を一から作っていく――というのがGaryの計画でした。
一方、土地をきれいにならしてホッとしたのもつかの間、ハワイの強い日差しを浴びた大きな野草があちらこちらですぐに成長します。自然農では雑草の根もある程度共生させますが、植えたばかりの苗の生育を妨げないよう周囲の草を刈って緑肥にしたり、鶏小屋へ運んだりと、雑草作業も頻繁にしなければなりません。To do listがどんどん溜まっていき全体工程は遅れていくばかり。GaryとTakaeの二人だけでは時間と労力に限りがあり、わずか3エーカーちょっとの農地でもボランティアの助けは必須でした。




そこへコロナ・パンデミックが勃発。しかし農業は外出禁止令の定める「エッセンシャル・ビジネス」(essential business=必要不可欠な事業)にあたったため、私たちも運よく作業を続行できました。
さらに、不要不急の外出禁止令により海へも山へもいけずにうずうずしていた若者たちが、同プロジェクトの噂を耳にして友人と誘い合い毎週ボランティアにやってきました。多い時には土曜日だけで20人以上も集まり、当初困難が予想された私たちの森林農業プロジェクトの基盤づくりが一気に進みました。まさにピンチがチャンスを作ってくれたと言えます。
ボランティアの数が多い時、Takaeは「飯炊きオバサン」に徹しました。農園内で採れた果物や野菜を使ったレシピをあれこれと考え、前の晩から仕込み、ボランティアたちへの感謝を込めて料理しました。農作業で気持ちよく汗をかいたあとに農園の恵みを食材にした手作りランチを分かち合いながら、「自然が一番のボス」「自然の摂理に従う」という共通理念のもとに集まった仲間たちと、農園の未来について語り合うことも楽しみの一つになり、次第に素晴らしいコミュニティが形成されていきました。


この、同じ思いを抱く人たちとの楽しく美味しい集いが、現在四半期ごとに開催している季節イベント企画の基礎になっています。当時ボランティアたちに人気があったウルやタロのレシピは、今も季節イベントに提供して好評をいただいています。
パンデミックが終息し毎週末やって来る地元ボランティアの数は減りました。が、その後も定期的に通い続けるコア・ボランティアたちの創意工夫と粘り強い作業のおかげで、土地がだんだん肥沃になっていきました。そして、前回紹介したような、ハワイ短期滞在者が友人から友人へとバトンを次の人に託すボランティア・リレーも続いています。
そして2年前、年会費でサポートしていただく「セカンドネイチャー・ファーム会員」制度を確立して以来、初めて自然農ボランティアに応募したあと当農園の意義目的に賛同して会員に移行する人、さらには海外の友人や家族や職場の仲間に声をかけて季節イベントにグループで参加する会員も少しずつ増えてきました。こうしたボランティアと会員の方々のおかげで、現在のセカンドネイチャー・ファームは成り立っています。
ハワイのオアフ島にある小さな自然森林農園に魅せられた人たちの、「このプロジェクトを未来に繋げたい」という願いの連鎖。それが今、静かに少しずつ広がり始めているのを感じます。ボランティアで力を貸してくださった皆さん、これからも支援してくださる皆さんに、深く深く感謝申し上げます。
