若鶏たちがマングースにやられる

昨年夏に当ファーム内で捕獲したマングース。今回出没しているものは、さらに巨大で獰猛になっています。

 二、三日前のこと、朝のルーティンを終えていたGaryが休憩所でコオラウ山を仰いだまま茫然と佇んでいました。

「どうしたの?」

「・・・鶏たちマングースにやられた・・・」

 うちの鶏たちはGaryがファームにいる間は放し飼いにされ、熟して自然に地上に落ちたウルやアボカド、バナナなどの果物や、草や土の下にいる虫たちを食べてはファーム中を歩き回り、まるまると大きく育っています。

 雛のうちに放し飼いにするとすぐにマングースや野犬などの外敵に襲われてしまうので、十分に大きく成長し逃げ足も速くなった頃から放し飼いにしています。

 今回殺されたのは、生まれたてのヒヨコの時から小屋の中で有機餌を与えて大事に育ててきた若鳥たちでした。そろそろ小屋の外に出しても大丈夫かなと思っていた矢先、若い鶏たちの小屋の隅に少しだけ空いていた穴から、Garyが留守の間にマングースが侵入したようなのです。

 朝一番の餌やりをしようと小屋を覗いたGaryの目に飛び込んできたのは、頭を食いちぎられた若鶏の胴体や散乱した羽、羽、羽。マングースの急襲に驚き逃げ場をなくした彼女たちは恐怖の中で相当暴れ回ったのでしょう。

 Garyがすぐにその残骸を処理してくれたので、私がファームに来たときは若鳥用の小屋は綺麗に片付けられていましたが、その殺戮の後を目の当たりにしたGaryはショックと怒りのあまりすぐに動けず、言葉も発せず、ひたすら山を仰ぎ見て、心を鎮めることに努めていたのです。

昨年夏に当ファーム内で捕獲したマングース。今回出没しているものは、さらに巨大で獰猛になっています。
昨年夏に当ファーム内で捕獲したマングース。今回出没しているものは、さらに巨大で獰猛になっています。

 マングースは大きいモノですと体長約26インチ(65cm)もある獰猛なインド原産動物で、ハワイ州では「侵入生物種」にあげられています。

 ハワイに入ってきたのは1883年、マウイ、モロカイ、オアフ各島の砂糖プランテーション業者が、ネズミを捕獲するために持ち込んだのが最初と言われています。(ハワイ州侵入生物種会議ウェブサイト参照:https://dlnr.hawaii.gov/hisc/info/invasive-species-profiles/mongoose/#:~:text=The%20mongooses%20found%20in%20Hawai,’i%20and%20O’ahu.)

 確かにネズミなどの齧歯動物も食べるのですが、それ以外の鳥や虫などの小動物、ウミガメなどハワイの絶滅危惧動物を含む土着動物の巣を襲い卵や子供を襲って食べることによる被害のほうが大きいため、今日では州内に持ち込むことも飼うことも禁止されており、違反者には罰金が科せられます。

 このファームでは農薬のような害虫駆除用の毒は使わないことを旨としてきたGaryは、ファームに侵入するイノシシやネズミはもとよりマングースに対しても、これまでは柵を作って農作物や鶏を彼らから保護してきました。さらにマングースの出没しそうな場所に罠をしかけ檻に閉じ込めて餓死させるなどの対処もしてきました。

 しかし今回鶏小屋の中にまで侵入して襲撃し若鳥の味を占めたマングースは、翌日性懲りもなくまたやってきては鶏小屋の周りでこちらの隙を伺いながらまたうろうろしています。

 鶏たちは、鶏糞とそれを草に混ぜる足技により有機の土を豊かにしてくれ、私たちには新鮮で美味しい卵を分けてくれる当ファームの「生産者」です。マングースはその大事な労働仲間を殺し、しかも私たちが保護しようとしている森林の自然生態系をも壊してしまうのですから、これはなんとかしなければなりません。

 本日、Garyはついにマングース駆除用毒入り餌を使用することを決断しました。ただし鶏が近づけない場所を選び、マングースがその毒入り餌に食らいつくまで辛抱強く観察するという、場所も時間も限定した駆除処置です。さらに鶏小屋も隙間を残さないよう頑丈に建て直しました。

 いつも昼間は小屋の外に飛び出し元氣に歩いたり走ったりしているベテランの鶏たちも、先日の隣の襲撃にすっかり怯えてしまったのか、自分たちの小屋の中で大人しくしています。雨期が終わり産卵の季節になってまた毎日たくさんの卵を産み出したところでしたが、彼女たちの恐怖が収まるまで、新鮮で美味しい卵はまた当分おあずけです。

巨大マングースを捕獲するまで、このようなのどかな光景はしばらく見られないでしょう。
巨大マングースを捕獲するまで、このようなのどかな光景はしばらく見られないでしょう。

追記:
この記事を読んだ方が「沖縄島北部地域におけるマングース防除事業」について調べて下さいました。ハワイ州には現在マングース禁止条例がありますが、日本も自治体を挙げて除去に取り組んでいるようです。
(https://kyushu.env.go.jp/okinawa/press_00016.html)

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この記事を書いた人

日本の新聞社系週刊誌記者、第二電電(現KDDI)広報責任者を経て米国留学。「持続可能な発展」などの政策比較研究を行い2000年カリフォルニア大サンディエゴ校で太平洋国際関係研究修士号取得。ハワイで有機園芸業を行っていたGary E. Johnsonとの結婚を機に2005年ハワイへ移住。翻訳出版とヨガインストラクターを続けながらGaryと共同で、「健康な食の生産、体と心の浄化、自然生態系の保全」を目的(3Pモットー)にした「森林農業+ヨガ・瞑想」プロジェクトをオアフ島ワイマナロで推進している。

After working as a reporter for a weekly newspaper and as a public relations manager at Daini-Denden (now KDDI), she moved to the U.S. to study comparative policies, such as on “sustainable development.” In 2000, she received her M.A. in Pacific International Relations from the University of California, San Diego, and in 2005, she married Gary E. Johnson, an organic gardener in Hawaii. While continuing to work as a translator, publisher, and yoga instructor, she has been working together with Gary on the Agroforestry + Yoga/Meditation project in Waimanalo, Oahu, which aims to “produce healthy food, purify the body and mind, and preserve the natural ecosystem (3P motto).”

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